フィットネスエビデンスまとめ

フィットネス情報のまとめ

-科学的根拠に基づく-大島が監修

はじめに

はじめに: このガイドでは、フィットネス初心者に向けて、科学的根拠に基づいた包括的な情報を提供します。内容は6つのセクションに分かれており、各セクションでは初心者にとって重要なポイントを紹介し、科学的研究の結果に基づく具体的なアドバイスを示します。また、各セクション末尾に参考文献リストを掲載し、本文中にも参照箇所を示しました。フィットネスの基本を理解し、楽しく継続する一助になれば幸いです。

1. トレーニング方法

なぜトレーニング方法を知ることが大切か

初心者にとって、効率的かつ安全に運動効果を得るにはトレーニング方法の基本を理解することが重要です。適切な方法でトレーニングすれば、時間が限られていても効果を最大化できます。一方、誤った方法はケガの原因にもなります。実際、多くの人が運動を避ける理由として「時間がない」ことを挙げています[1][2]。しかし研究によれば、ポイントを押さえた時短トレーニングでも十分な成果が得られることがわかっています[3][4]。このセクションでは、初心者が知っておくべき主要なトレーニング手法とその科学的根拠を説明します。

有酸素運動と筋力トレーニングのバランス

健康増進のためには、有酸素運動(エアロビクス)と筋力トレーニングの両方を取り入れるのが理想的です。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、18〜64歳の成人は週150~300分の中強度有酸素運動(または75~150分の高強度運動)を行い、さらに週2日以上の筋力トレーニングを全身の主要筋群に対して行うよう推奨しています[5][6]。有酸素運動は心肺持久力を高め、筋力トレーニングは筋肉や骨を強化します。両者を組み合わせることで相乗効果が得られ、死亡リスクの低下効果も単独実施より大きいことが報告されています[7](※この点の詳細はセクション2参照)。

初心者の方は、まずはウォーキングや軽いジョギングなど手軽な有酸素運動から始め、徐々に強度や時間を増やしていくと良いでしょう。また筋力トレーニングも週に2回程度、自重エクササイズ(腕立て伏せ、スクワットなど)やマシントレーニングから取り入れてみてください。両方をバランスよく行うことで、心肺機能と筋力の両面から体力向上を図れます。研究によれば、有酸素運動と筋トレを両方行っている人は、いずれか一方のみの人に比べて全死亡および心疾患死亡のリスクがさらに低いことが示されています[7]

種目の選び方と基本の「大きな筋群」運動

筋力トレーニングでは、種目の選び方が効果に大きく影響します。初心者には、なるべく複数の関節と筋肉を同時に使う複合的なエクササイズ(コンパウンド種目)がおすすめです[8]。具体的には、脚の押す動作(例:スクワット)、上半身の引く動作(例:懸垂やラットプルダウン)、上半身の押す動作(例:ベンチプレスや腕立て伏せ)といった3種類を中心に据えると良いでしょう[8]。これらの種目は一度に多くの筋肉を動員するため、効率よく全身を鍛えられます。

また、フリーウェイト(ダンベルやバーベル)とマシンのどちらを使うべきか悩むかもしれません。それぞれ利点がありますが、初心者の場合は安全性とフォーム習得の観点からマシンを活用するのも一案です。アメリカスポーツ医学会(ACSM)によれば、マシントレーニングは動作が安定しており初心者にも比較的安全とされています[9]。一方、フリーウェイトは安定筋も鍛えられ機能的との意見もあります。最近のメタ分析では、フリーウェイトとマシンの間で筋力・筋肥大効果に有意差はなく、自分が扱いやすい好きな方法でトレーニングを続けることが重要と結論づけられています[10][11]。つまり、継続できるやり方を選ぶのが一番です。

トレーニング頻度とボリューム:週1回でも効果あり?

「週に何回トレーニングすればいいのか」は初心者によくある疑問です。一般的な推奨は2~3ですが[12]、最新の研究では頻度よりも総トレーニング量(ボリューム)が重要だと示唆されています[4]。2018年のメタ分析では、未経験者を含む被験者で筋力の向上を比較したところ、週1回のトレーニングでも週3回以上と統計的に同等の筋力向上が得られました(総負荷量が同じ場合)[4]。つまり、1回の頻度でも1週間あたりの総セット数と負荷量を確保すれば効果は出せるということです。

初心者はまず無理のない頻度で始め、週1回しかできない場合でも落胆する必要はありません。例えば全身を網羅するサーキット形式の筋トレを週1回行うだけでも、筋力アップ効果が得られることが報告されています[13][14]。実際、「最小限のトレーニング量」で効果を検証した最新レビューでは、1回・各種目3セット未満・負荷50%1RM程度の筋トレでも、初心者の筋力は向上すると結論づけています[13][14]。忙しい方もまずは週1回から始め、慣れてきたら頻度を増やすと良いでしょう。

ただし頻度を上げられる場合、同じ一週間でもトレーニング日数を増やせば一度の運動量を分散できるため、疲労管理がしやすくなる利点もあります。可能であれば2回以上に挑戦し、種目を分けたり全身を複数日に分割する(スプリット・ルーティン)など工夫すると継続しやすくなるでしょう。

適切なセット数と負荷・回数設定(レップレンジ)

筋トレでは「何セット・何回・どのくらいの重さで行うか」も重要です。初心者の場合、各筋群につき週あたり合計4セット以上を目標にすると筋肥大・筋力向上に効果的とされています[8][15]。例えば胸の筋肉なら、週に合計4セット以上のベンチプレスや腕立て伏せを行うイメージです。

1セット内の反復回数(レップ数)については、筋力と筋肥大の両面を狙うなら6~15回程度が推奨されています[16]。この範囲の回数で限界が来るような重量設定(いわゆる6RM~15RMの負荷)にすると、筋肉に十分な刺激を与えられます[16]。軽めの重量で15回超える高回数トレーニングでも、限界まで追い込めば効果はありますが、時間効率は下がるでしょう[16]

初心者のうちはフォーム習得とケガ予防が最優先ですから、最初の数週間~1ヶ月程度は軽めの重量で10~15回×1~2セットから始めてください。動作に慣れてきたら徐々にセット数や重量を増やしましょう。筋力がついて回数に余裕が出てきたら、重量を上げて再び6~12回程度で限界が来る設定にすると、漸進的過負荷(プログレッシブ・オーバーロード)の原則を満たせます。少しずつ負荷を増やしていくことが、継続的に筋力・筋量を伸ばす鍵です。

ウォームアップとストレッチ:怪我予防のポイント

運動前のウォームアップ(準備運動)は、パフォーマンス向上とケガ予防の観点から非常に重要です。ただし初心者が陥りがちな誤解として、「運動前に長時間の静的ストレッチをしなければいけない」というものがあります。最新の知見では、静的ストレッチ(筋肉を一定時間伸ばすストレッチ)は、怪我予防には必ずしも有効でないことが分かっています[17][18]。ある系統的レビューでは、静的ストレッチをウォームアップに取り入れても、運動傷害の発生率を有意に下げなかったと報告されています[17]。むしろ、長い静的ストレッチは一時的に筋力やパワーを低下させる可能性も指摘されています。

その代わり、運動前には動的ウォームアップ(体を動かしながら筋肉を温める動的ストレッチや軽い有酸素運動)を重視しましょう。ダイナミックストレッチ(関節を大きく動かす反動をつけたストレッチ)や軽いジョギング・ジャンプなどで体温を上げ、関節の可動域を広げると良い準備運動になります。研究によれば、動的ストレッチと軽い運動を組み合わせたウォーミングアップを行うと、怪我の発生率が減少するとの報告があります[19][20]。例えば肩を大きく回す、膝の曲げ伸ばしをリズミカルに行う、体幹をひねる動きを繰り返す等で、筋肉と神経を活動モードに切り替えていきます。

一方でクールダウン(運動後の整理運動)としてのストレッチは、柔軟性向上やリラックスに役立つため取り入れて問題ありません。要は、運動前の静的ストレッチは短めに、運動後や別日に柔軟性を高める目的でストレッチを行うのがおすすめです。ACSMの提言でも「ウォームアップは種目に即した動的準備運動に留め、柔軟性そのものが目的でない限りストレッチは優先しなくてよい」とされています[21][22]。初心者の皆さんも、このポイントを押さえて効率よく安全にトレーニングを始めてください。

まとめ: 行動に移すためのアドバイス

  • 計画を立てよう: まずは週の運動予定を立て、無理のない頻度から始めましょう。例:「毎週水・土曜の朝に30分ずつ運動」。
  • 複合種目を中心に: スクワット、腕立て伏せ、懸垂など大きな筋群を動かす種目を優先し、全身をバランスよく鍛えます[8]
  • セット×回数の目安: 1種目あたり10回前後できる重量で2~3セットから開始。慣れたら週合計4セット以上を目指して負荷やセット数を増やします[16][3]
  • フォーム習得と安全第一: 鏡でフォームをチェックしたり、重量は欲張らず軽めから始めてください。必要ならマシンを活用し、ケガなく進めましょう[9][11]
  • ウォームアップの励行: 運動前5~10分は動的ウォームアップに時間を使い、身体を温めてからトレーニングに入ります[19]

以上のポイントを押さえてトレーニングを行えば、初心者でも限られた時間の中で着実に効果を感じられるでしょう。「継続は力なり」です。焦らず楽しみながら、自分のペースで体力づくりを続けてください。

参考文献(トレーニング方法)

  1. Maruhashi T., Higashi Y. (2024) Combining muscle strengthening activity and aerobic exercise: a prescription for better health in patients with hypertension. Hypertension Research, 47:3082–3084.[5][7]
  2. Iversen VM et al. (2021) No Time to Lift? Designing Time-Efficient Training Programs for Strength and Hypertrophy: A Narrative Review. Sports Medicine, 51(10):2079–2095.[8][16]
  3. Ralston GW et al. (2018) Weekly Training Frequency Effects on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Medicine – Open, 4:36.[4]
  4. van den Tillaar R., Bjørnsen T. (2023) Effect of free-weight vs. machine-based strength training on maximal strength, hypertrophy and jump performance – a systematic review and meta-analysis. BMC Sports Sci Med Rehabil, 15:103.[10][9]
  5. Thum JS et al. (2017) High-Intensity Interval Training Elicits Higher Enjoyment than Moderate Intensity Continuous Exercise. PLOS ONE, 12(1):e0166299.[23]
  6. Behm DG et al. (2024) Minimalist Training: Is Lower Dosage or Intensity Resistance Training Effective to Improve Physical Fitness? Sports Medicine, 54(2): 1–17 (Advance online).[13][14]
  7. Small K et al. (2008) A systematic review into the efficacy of static stretching as part of a warm-up for injury prevention. Res Sports Med, 16(3): 213–231.[17][18]
  8. Behm DG et al. (2023) Potential Effects of Dynamic Stretching on Injury Incidence of Athletes: A Narrative Review. Int J Environ Res Public Health, 20(8): 6524.[19]
  9. American College of Sports Medicine (ACSM) Guidelines (2011) Quantity and Quality of Exercise for Developing and Maintaining Fitness. Med Sci Sports Exerc, 43(7):1334–1359.[22][21]

※各URLは本文中の該当箇所にて【】内に示しています。

2. 運動の効果と成果

運動がもたらす主な効果とは?

初心者の方がトレーニングを始める上で、「運動すると具体的にどんな良いことがあるのか?」を知ることは大きなモチベーションになります。運動の効果は身体面だけでなく精神面にも及び、科学的研究によってさまざまな恩恵が明らかにされています。適切な運動習慣は筋力や持久力の向上はもちろん、生活習慣病の予防、メンタルヘルスの改善、QOL(生活の質)の向上など、多岐にわたる良い結果をもたらします[24][25]。ここでは、初心者が知っておきたい運動の代表的な効果と、その裏付けとなるエビデンスを紹介します。

心臓血管系への好影響と全身持久力の向上

有酸素運動(例:ウォーキング、ジョギング、水泳など)は心臓や肺の機能を高め、全身持久力(スタミナ)を向上させます。規則的な有酸素運動により心臓は強く血液を送り出せるようになり、安静時の心拍数や血圧が下がるといったポジティブな変化が起こります[26]。例えば高血圧の人では、中等度の有酸素運動を継続することで収縮期血圧(上の血圧)が平均5~8mmHg低下したとの報告があります[26]。これは降圧薬にも匹敵する改善幅であり、運動が心血管の健康に与える影響は非常に大きいと言えます。

さらに有酸素運動は血中脂質にも良い影響があります。継続的な運動習慣により、HDL(「善玉」コレステロール)が増加し、LDL(「悪玉」コレステロール)や中性脂肪が減少する傾向が観察されています[27][28]。これにより動脈硬化リスクが下がり、結果として心臓病や脳卒中の予防につながります。

また、十分な持久力がつくと日常生活でも疲れにくくなります。駅の階段を上がっても息切れしにくくなる、長時間歩いても平気になる、といった実感が得られるでしょう。こうした日常の活動度向上は健康寿命の延伸にも寄与します。

全死亡リスクの低下: 運動習慣のある人は、統計的に見て運動しない人より長生きする傾向があります。大規模疫学研究によれば、適度に体を動かす人はそうでない人に比べて死亡リスクがおよそ20~30%低いという結果が報告されています[25][29]。特に有酸素運動と筋トレを組み合わせている人では、両方しない人に比べ全死亡リスクが約40~46%低減したとのメタ分析結果もあります[7]。運動は「最強の万能薬」とも呼ばれ、寿命にも良い影響を及ぼすのです。

筋力の向上と身体機能の改善

筋力トレーニング(レジスタンス運動)は筋肉と骨を強くし、身体機能を向上させます。定期的に筋肉に負荷をかけることで筋繊維が太くなり、力を発揮する能力が高まります。初心者でも数か月継続すれば、「重い荷物が楽に持てるようになった」「階段の上り下りが苦にならない」といった日常生活動作の向上を実感できるでしょう。研究でも、筋力トレーニングによって筋力と筋肥大(筋肉量増加)が有意に向上し、日常生活の機能が改善することが示されています[24]

例えば高齢者を対象とした介入研究では、適切なレジスタンス運動により歩行速度や椅子立ち上がりテストの成績が向上し、転倒リスクが低減したとの報告があります[27][28]。若年〜中年の成人でも、筋力がつくことで姿勢が安定し腰痛などが軽減するケースもあります。筋肉が関節を支えるため、筋力向上はケガ予防や身体の痛み軽減にもつながります。

さらに筋トレは骨密度の維持・向上にも効果的です。骨に適度な負荷(荷重刺激)をかけることで骨細胞が刺激され、骨量が増えるからです。そのため筋トレ習慣のある人は加齢に伴う骨粗しょう症になりにくく、骨折リスクも低下します[30][31]。成長期の若年者から中高年まで、筋力トレーニングは骨の健康にも有益と言えます。

以上のように、筋トレで筋肉・骨・関節が強化されると、日常生活の自立度が高まり活動的になれます。買い物の荷物を持つ、子どもを抱き上げる、趣味のスポーツを楽しむなど、「動ける体」が手に入ることは人生の質を高める大きな要因です。

代謝の改善と体重コントロールへの効果

運動は私たちの代謝にも良い影響を及ぼします。継続的な運動により筋肉量が増えれば基礎代謝(何もしなくても消費されるエネルギー量)が上がり、太りにくく痩せやすい体質へと近づきます[32][33]。筋肉は安静時にもカロリーを消費する組織なので、筋量アップは「エネルギー消費工場」を大きくするイメージです。

また有酸素運動はエネルギー消費量そのものを増やすため、脂肪燃焼による体脂肪減少に直結します。適度な運動習慣がある人は、食事から摂取したカロリーを活動で消費しやすく、体重管理が容易になります。実際、運動(特に食事制限と併用した場合)は減量と体重維持に効果的であることが数多くの研究で示されています[34][35]。一方、運動習慣がないと余分なエネルギーが脂肪として蓄積しやすく、肥満・過体重につながりがちです。

さらに運動は血糖の代謝改善にも有効です。筋肉を動かすと血中のブドウ糖が消費され、インスリン感受性(インスリンの効きやすさ)が高まります[28]。週に150分程度の有酸素運動を習慣化すると、2型糖尿病の発症リスクが明らかに低下するとの報告もあります[27][28]。これは運動によって血糖値のコントロールが改善するためです。

総合的に見て、運動はエネルギー収支を適正化し太りにくい体を作るだけでなく、内臓脂肪の減少やインスリン抵抗性の改善を通じてメタボリックシンドロームの予防・解消にも寄与します[36][37]。健康診断で「血糖値が高め」「コレステロールや中性脂肪が高い」と言われた方にも、運動療法は効果的な改善策となるでしょう。

メンタルヘルスへの貢献

運動には精神面の健康を増進する効果もあります。身体を動かすと脳内でエンドルフィンやセロトニンといった神経伝達物質が分泌され、ストレス緩和や気分高揚(いわゆるランナーズハイ)をもたらします。研究でも、定期的に運動する人は不安や抑うつ症状が軽減し、自己肯定感が高まる傾向が示されています[38][39]

例えばあるメタ分析では、運動はうつ病の症状を軽減する有効な治療法であることが確認されました[40]。中等度の強さで週3回程度の有酸素運動やヨガ、筋トレを行った被験者は、対照群と比較して抑うつスコアが有意に改善しています[41]。また別の研究では、週にわずか150分程度の中強度の身体活動でも、全くしない人に比べてうつ病発症リスクが大幅に低下するという結果が得られています[38]。つまり、少し体を動かす習慣を持つだけでメンタルヘルス上のメリットが期待できるのです。

運動はまた、睡眠の質を向上させる効果もあります。日中に適度に体を疲労させることで夜ぐっすり眠れるようになり、不眠や睡眠障害の改善につながるとの報告があります[42][43]。十分な睡眠が取れるようになると気分や認知機能も安定し、結果的に精神的な健康が底上げされます。

さらに、運動を通じて目標を達成した経験は自信となり、精神的な強さ(レジリエンス)を養う助けともなります。たとえば「今日は初めて5km続けて走れた!」といった成功体験は、自分にもやればできるという自己効力感を高め、日常生活のストレスへの耐性向上にも寄与します。

病気予防と健康寿命の延伸

ここまで述べたような効果の積み重ねにより、長期的にはさまざまな生活習慣病の予防につながります。運動不足は世界的に見ても死亡リスクの大きな要因の一つであり、WHOは身体不活動(運動不足)を世界全体の死亡原因の第4に位置づけています[29]。推計では、もし世界中の人々がもっと活動的になれば、年間500万件近い死亡を防げるとも言われます[29]。それほどまでに運動は健康に直結しているのです。

具体的な疾患で見ると、定期的な運動は心臓病、脳卒中、2型糖尿病、メタボ、高血圧、脂質異常症、骨粗しょう症、認知症、そして一部の癌(大腸癌、乳癌など)のリスク低減と関連します[25]。例えば2型糖尿病では、運動習慣のある人はない人に比べ発症率が約30–50%低く[27][28]、認知症についても中年期の身体活動レベルが高い人ほど老年期の発症率が低い傾向が報告されています。

こうした病気予防効果のおかげで、運動習慣のある人は生涯を通じて健康で自立した生活を送りやすくなります。いわゆる健康寿命(健康上の問題で制限されることなく生活できる期間)の延伸にもつながるのです。

まとめ: 初心者が知っておきたい運動の恩恵

  • 全身持久力アップ: 息切れしにくく疲れにくい体になり、日常生活が快適に[26]
  • 筋力・骨密度アップ: 体が引き締まり姿勢が良くなる。腰痛や関節痛の軽減、転倒防止[24]
  • 代謝改善: 太りにくい体質へ。血圧・血糖・血中脂質のコントロール向上[27][28]
  • メンタルヘルス向上: ストレス発散・気分爽快効果。うつや不安の予防・軽減[38][41]
  • 病気予防と長寿: 生活習慣病や一部の癌リスクを下げ、健康的に長生きできる可能性が高まる[25][29]

このように、運動には計り知れないメリットがあります。初心者の皆さんは「最初の一歩」を踏み出すことで、これら多くの恩恵を少しずつ手にしていくことができます。次のセクションでは、運動効果をさらに引き出すための食事と栄養のポイントについて見ていきましょう。

参考文献(運動の効果と成果)

  1. Iversen VM et al. (2021) Strength training increases strength and provides numerous health benefits (No Time to Lift? Review)[24].
  2. Maruhashi T., Higashi Y. (2024) WHO 2020ガイドライン解説: 身体活動の健康効果. Hypertens Res, 47:3082–3084.[25][29]
  3. Maruhashi T., Higashi Y. (2024) 有酸素運動+筋トレの死亡リスク低減効果. Hypertens Res, 47:3082–3084.[7]
  4. Wen CP et al. (2011) Minimum amount of exercise for reduced mortality. Lancet, 378(9798):1244-53.[29]
  5. Momma H et al. (2022) Muscle-strengthening activities and risk of mortality. Br J Sports Med, 56:755–763.[44]
  6. Huang G et al. (2013) Aerobic exercise and blood pressure. Prev Cardiol, 16(3): 129-134.[26]
  7. Gordon BR et al. (2018) Exercise as treatment for depression: meta-analysis. J Affect Disord, 219:37-49.[45]
  8. Pedersen BK., Saltin B. (2015) Exercise as medicine – evidence for prescribing exercise as therapy. Eur J Clin Invest, 45(10): 1052-1068.[27][28]
  9. Lee DC et al. (2012) Leisure-time physical activity and life expectancy. BMJ, 345:e6000.[29]
  10. Schuch FB et al. (2018) Physical activity and incident depression. Am J Psychiatry, 175(7): 631-648.[38]

3. 食事と栄養

初心者にとっての栄養の重要性

「トレーニングは食事が8割」と言われるほど、食事と栄養はフィットネスの成果に密接に関わっています。運動で良い効果を出すには体を動かす燃料や材料が必要であり、それらは日々の食事から供給されます。初心者の中には「とにかく運動さえすれば痩せる/筋肉がつく」と思われる方もいますが、実際には適切な栄養摂取と組み合わせることで運動の効果は最大化されます[46][47]。一方で、誤ったダイエットや栄養不足はトレーニング効果を阻害したり健康を損なったりしかねません。このセクションでは、初心者が押さえておきたい基本的な栄養知識と、運動との関係について解説します。

バランスの良い食事の基本

まず大前提として、バランスの良い食事を心がけることが重要です。極端な食事制限や単一の食品だけに頼ることなく、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取しましょう。WHOも「エネルギーや栄養素は、さまざまな食品を組み合わせた偏りのない食事から摂るべき」と推奨しています[47]

具体的には、以下のポイントを意識してください[48]:

  • 主食(炭水化物): 全粒穀物や豆類などからエネルギーの大部分を摂る。[49]
  • 主菜(タンパク質): 肉、魚、卵、大豆製品などから良質なたんぱく質を適量摂取。
  • 副菜(ビタミン・ミネラル): 野菜や果物を毎日合計400g以上(5皿分程度)食べる。[50]
  • 乳製品: 牛乳・ヨーグルト・チーズなどでカルシウム補給(脂肪分は控えめに)。
  • 脂質: 総エネルギーの30%未満に抑え、バターや肉の脂よりもオリーブオイルや魚の脂など不飽和脂肪酸を多めに。[49]
  • 糖分: 清涼飲料水やお菓子などの「加糖」は全体のエネルギーの5~10%以内に制限。[51]
  • 塩分: 1日5g(小さじ1弱)未満に控える。[50]

このような健康的な食事は、運動する人だけでなく全ての人に推奨される基本です[46]。初心者の方も、まずは栄養バランスの良い食生活を土台にしましょう。それだけで体調が整い、トレーニングのパフォーマンスも向上します。実際、野菜・果物・全粒穀物中心の食事をしている人は、加工食品や高脂肪食中心の人に比べて健康指標が良好であることが証明されています[46]

タンパク質: 筋肉の材料をしっかり摂る

筋肉を作るための材料となる栄養素がタンパク質です。筋トレによって傷ついた筋線維を修復・合成するのに十分なタンパク質が必要となります。初心者は特に「プロテインをどれだけ摂れば良いの?」と疑問を持つでしょう。

一般的な推奨として、運動習慣のある人は体重1kgあたり1.4~2.0g程度のタンパク質を1日に摂取すると良いとされています[52]。例えば体重60kgの人なら、1日あたり約84~120gが目安になります。これは通常の食事に加えて意識的に高タンパク食品を取り入れないと達成しにくい量です。以下はタンパク質が豊富な食品例と、だいたいの含有量です:

  • 鶏胸肉100g: 約22g
  • 卵1個: 約6g
  • 木綿豆腐1/2丁: 約10g
  • ツナ缶1缶: 約15g
  • 牛乳200ml: 約6-7g
  • プロテインパウダー1杯: 約20-25g

食事から摂るのがベストですが、足りない場合はプロテイン補助食品(プロテインシェイクなど)を活用するのも手です。実際、タンパク質摂取量が不足している場合にプロテイン補給すると、筋肉量や筋力の増加が最適化されることがメタ分析で示されています[53]。逆に言えば、普段から十分にタンパク質を摂れていれば、サプリメントの追加効果はそれほど大きくありません[53]

また、一度に大量のタンパク質を摂っても体が利用できる量には限りがあります。効率よく筋タンパク質合成を高めるには、こまめに適量を摂ることが鍵です。国際スポーツ栄養学会(ISSN)は、1回あたり20~40g程度の高品質なたんぱく質を、3~4時間毎に摂取するパターンが筋たんぱく合成に有利としています[54]。例えば朝食にヨーグルト+卵、昼食に肉や魚、間食にプロテインシェイク、夕食に豆腐や肉料理、というように一日数回に分けてタンパク質を摂ると良いでしょう[54]。この方法は筋肉の材料を常に供給し、合成反応を途切れさせない効果があります。

炭水化物: トレーニングのガソリン

炭水化物(糖質)は、運動時の主要なエネルギー源(ガソリン)です。特にランニングやサイクリング、HIITのような高強度の運動では筋肉内のグリコーゲン(糖質の貯蔵形態)が大量に消費されます。適切に糖質を摂っていないと、エネルギー切れで力が出なくなったり、集中力が低下したりする恐れがあります。

初心者の方には「糖質=太るもの」と敬遠する向きもありますが、運動する人にとって糖質は必要不可欠な栄養です。極端な低糖質ダイエットをするとスタミナが続かず、トレーニングの質が落ちてしまいます[55][56]。実際、持久系の競技者でケトジェニック(超低糖質)ダイエットを行った場合、高強度領域でのパフォーマンスが低下することが報告されています[57]。これは筋肉の燃料であるグリコーゲン不足により、全力を出せなくなるためと考えられます。

ではどの程度炭水化物を摂れば良いのでしょうか。日常的な運動レベルであれば、厚生労働省の食事摂取基準では総エネルギーの50~65%を炭水化物から摂ることが推奨されています。体重や運動量によっても変わりますが、例えば1日2000kcal摂る人なら250~330g程度が目安です。激しいトレーニングをする日は、トレーニング前後におにぎりやバナナ、スポーツドリンクなどで糖質をしっかり補給すると良いでしょう。運動前に糖質を摂ることでトレーニング中のエネルギー切れを防ぎ、運動後に摂ることで使い果たしたグリコーゲンの回復を促せます。

また、炭水化物には種類があります。生成度の低い複合炭水化物(玄米、全粒パン、オートミール、芋類、豆類など)は消化吸収がゆっくりで血糖値を安定させるため、日常の主食に適しています。一方、運動直前や運動中に素早くエネルギーが欲しい場合は、果物やエネルギージェルなど単純炭水化物(吸収が速い糖質)も役立ちます。状況に応じて上手に糖質を活用しましょう。

脂質: 質と量に注意

脂質(脂肪)はエネルギー源であると同時に、細胞膜やホルモンの構成要素として重要な栄養素です。ただし高カロリーなので摂りすぎには注意が必要です。適量を心がけつつ、質の良い脂を選ぶことが大切です。

具体的には、肉の脂身やバター、揚げ物などに多い飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は控えめにし、魚やナッツ、オリーブオイルなどに含まれる不飽和脂肪酸を積極的に取りましょう[49]。不飽和脂肪酸には炎症を抑え心血管疾患リスクを下げる働きがあり、トレーニングによる体づくりにもプラスに働きます。

摂取割合の目安としては、総エネルギーの20~30%が脂質からが適当です[49]。例えば1日2000kcalなら脂質は44~67g程度です。運動をしているからといって油っぽいものを好き放題食べてよい訳ではありません。筋肉を増やしたい場合でも高脂肪食は控え、余剰カロリーは主に炭水化物とタンパク質から取る方が体重増加をコントロールしやすいです。

水分とミネラル: パフォーマンスを支える潤滑油

運動時には発汗によって多くの水分と電解質(ナトリウムなど)が失われます。水分補給は最も基本的かつ重要な栄養ケアの一つです。人は体重の2%以上の水分が失われると、持久力や筋力が顕著に低下するとされています[58]。例えば体重60kgの人なら1.2リットル(コップ6杯程度)の汗をかくとパフォーマンスが落ち始めます[58]。喉の渇きを感じる頃には既に1~2%脱水が進行しているため、運動中は喉が渇く前に少しずつ水分を摂ることが大切です。

特に夏場や長時間の運動時は、水分と同時に塩分(ナトリウム)も補給しましょう。スポーツドリンクや塩タブレットなどを利用すると手軽です。塩分を全く補給せず水だけ大量に飲むと、血中のナトリウム濃度が低下して痙攣などを起こす低ナトリウム血症のリスクがあります。発汗が多い状況では、水1リットルに対して食塩1~2g程度の補給を目安にすると良いでしょう。

また、カルシウム・鉄・マグネシウム・亜鉛などミネラル類も、運動する人に不足しがちな栄養です。カルシウムは骨や筋収縮に不可欠で、不足すると骨密度低下や痙攣リスクが高まります。鉄は酸素運搬に必要で、不足すると貧血になり持久力が落ちます。これらは基本的に食事から摂れますが、女性や成長期の若者、ビーガンの方などは意識して多めに摂取してください。例えば乳製品や小魚、緑黄色野菜でカルシウムを、赤身の肉やレバー、ほうれん草で鉄を補給するなどです。

減量や増量と食事戦略

フィットネス初心者の目標として多いのが「体脂肪を減らしたい(ダイエット)」または「筋肉を増やしたい(バルクアップ)」です。これらの目標達成には食事管理が鍵を握ります。

減量(脂肪を減らす)には、摂取カロリーが消費カロリーを下回る状態、すなわちカロリー赤字(アンダーカロリー)を作る必要があります[59][60]。無理のない範囲で毎日少しずつ摂取カロリーを減らし、運動で消費エネルギーを増やせば、体は不足分を体脂肪で補おうとします。一例として、1日あたり500kcalのエネルギー赤字を作れば、1週間で約0.5kgの脂肪が落ちる計算になります(脂肪1kgは約7000kcalに相当)。実際の体重減少は体水分の変動などもありますが、「摂取<消費」の基本原則は減量の絶対条件です[34]

ただし減量ペースが速すぎると筋肉まで落ちてしまう恐れがあります。急激なダイエットより、ゆっくりと着実な減量の方が筋肉を温存しやすいというエビデンスもあります[61][62]。例えば5週間で体重の5%減らす急激減量より、15週間かけて同じ5%減らす方が、除脂肪体重(筋肉量)の減少が少なかったという報告があります[61]。極端な食事制限は栄養不足による体調不良も招きかねません。減量中こそ高タンパクの食事を維持し、ビタミン・ミネラルも不足しないようバランスを保つことが大切です。

一方、増量(筋肉量を増やす)にはある程度のカロリー余剰(オーバーカロリー)が必要です。摂取エネルギーに余裕がある状態でハードな筋トレを行うと、体は余剰カロリーを使って筋肉を合成しようとします。ただし闇雲に食べ過ぎると脂肪も増えてしまうため、適度な余剰がポイントです。目安としては、維持カロリー(体重維持に必要なエネルギー)+300~500kcal/日程度を上乗せすると良いでしょう。この場合もタンパク質を十分に摂りつつ、炭水化物でトレーニングエネルギーを確保し、脂質は摂り過ぎないよう管理します。

なお、体重を増減させる試みでは「リバウンド」や「筋肉の増減」が気になるところです。いわゆる体重の増減を繰り返す「ウェイトサイクリング」は、筋肉より脂肪がつきやすい体質になる懸念があります[63][64]。減量後に過剰に食べて急激に体重が戻ると、落とした筋肉はすぐに戻らない一方で脂肪は速やかについてしまう傾向があるためです[63]。その結果、以前より体脂肪率が高くなる「脂肪優勢のリバウンド」になりかねません[63][65]。これを防ぐには、減量後も急にやめず徐々にカロリーを増やして維持期につなげること、筋トレを続けて筋肉をできるだけ維持・増強することが大切です。

まとめ: 食事と栄養のアドバイス

  • PFCバランスを整える: タンパク質(Proteins)、脂質(Fats)、炭水化物(Carbs)のバランスを意識しましょう。目安はP:約15~25%、F:約20~30%、C:約50~60%[52][49]
  • タンパク質をこまめに摂取: 毎食にタンパク質源を配置し、1日3~5回に分けて摂りましょう(例: 朝卵・昼肉・間食プロテイン・夜魚など)[54]。運動後30分以内のプロテイン補給も有効です。
  • 炭水化物でエネルギーチャージ: 主食は抜かず、全粒穀物や野菜、果物から適量の糖質を摂取。運動前後には吸収の早い糖質も活用してパフォーマンス維持と回復促進を図ります[57]
  • 質の良い脂を適量に: 揚げ物やスナック菓子は控えめにし、魚やナッツ、オリーブオイルなどから不飽和脂肪酸を摂取。摂りすぎは禁物ですが、完全カットはせず適度に。
  • 水分補給を怠らない: トレーニング前後はコップ1~2杯の水を目安に、長時間運動時は水500mlにつき塩1g程度も補給[58]。日常的にもこまめな水分摂取を習慣づけましょう。
  • サプリメントの活用: 基本は食事から。しかし不足しがちな栄養(例: ビタミンD、鉄、プロテインなど)はサプリで補ってもOK。用法用量を守り、食品で摂れる分はなるべく食品から。
  • 急がば回れ: 極端なダイエットや過剰な増量は禁物。ゆるやかなペースで体重をコントロールし、継続可能な食習慣を築くことが成功の秘訣です[61][66]

栄養はフィットネスの成果を左右する重要な要素ですが、完璧を目指しすぎてストレスを溜めないことも大切です。まずは基本的な食習慣の改善から始め、一歩一歩理想の栄養バランスに近づけていきましょう。

参考文献(食事と栄養)

  1. World Health Organization (2020) Healthy diet (健康的な食事の推奨)[47][48]
  2. Jäger R et al. (2017) International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr, 14:20.[52][54]
  3. Morton RW et al. (2018) Protein supplementation and muscle mass: a meta-analysis. Br J Sports Med, 52(6):376-384.[53]
  4. Antonio J et al. (2014) Protein overfeeding does not add fat mass in resistance-trained men. J Int Soc Sports Nutr, 11:19.[67]
  5. Hawley JA., Leckey JJ. (2015) Carbohydrate dependence during prolonged exercise. Sports Med, 45(S1): S5-S12.[57]
  6. Burke LM. (2015) Re-examining high-fat diets for sports performance. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 25(1):63-69.[68][55]
  7. Thomas DT et al. (2016) Position of the Academy of Nutrition and Dietetics: Nutrition and Athletic Performance. J Acad Nutr Diet, 116(3):501-528.[58]
  8. Mettler S et al. (2010) Protein intake and weight loss retention. Med Sci Sports Exerc, 42(2):326-37.[69]
  9. Slentz CA et al. (2004) Exercise vs diet in weight loss. Am J Physiol Endocrinol Metab, 286(5):E941-9.[34][35]
  10. Dulloo AG et al. (2015) Weight cycling and fat overshooting. Obes Rev, 16 Suppl 1:25-35.[63][70]

4. 健康とライフスタイル習慣

フィットネスは生活習慣全体で作られる

フィットネス初心者が効果を実感し、それを長く維持するためには、運動や食事だけでなく健康的なライフスタイル習慣全般を整えることが大切です。十分な睡眠、ストレス管理、禁煙、適度な飲酒、日常活動量の確保など、毎日の生活習慣が土台となって初めて運動と栄養の効果が最大化されます。セクション4では、初心者が見落としがちな運動以外の健康習慣に焦点を当て、その重要性と具体的な改善ポイントを解説します。良いトレーニングも、不健康な生活習慣によって相殺されてはもったいないですよね。ぜひ総合的な健康づくりの視点で取り組んでみましょう。

睡眠: 「休むこと」もトレーニングの一部

睡眠は筋肉の成長・回復やメンタルの安定に欠かせない時間です。トレーニング後、筋肉は休息中に修復されて強くなりますが、その多くは睡眠中に進行します。寝ている間には成長ホルモンが多く分泌され、タンパク質合成や組織修復が促進されます。研究でも、十分な睡眠を取ることが筋力や持久力の向上、体脂肪減少を助けることが示唆されています。一方、睡眠不足は筋肉の回復を妨げる可能性があります[71][72]。例えば睡眠を数日間大幅に削減すると、筋肉の分解が進んで合成が追いつかず、筋力低下や筋量減少につながる恐れが報告されています[71][72]

また、睡眠不足は運動パフォーマンスにも直結します。徹夜明けや慢性的な寝不足状態では、反応時間が遅れたり調整力が低下したりして、トレーニング中の怪我リスクが高まります[73]。実際のメタ分析でも、睡眠不足は有酸素持久力や瞬発力、筋力、スピードなど幅広い能力を有意に低下させることが確認されています[74][75]。つまり「しっかり寝ること」も筋トレやランニングの成果を左右する重要要素なのです。

では、どのくらい眠れば良いのでしょうか。個人差はありますが、一般的には1日7~9時間の睡眠が推奨されます。成長期の若者やトレーニング負荷の高い人は8時間以上を目指すと良いでしょう。質の良い睡眠を確保するために、以下の点を心がけてください:

  • 就寝前の強い光(スマホ・PC)やカフェイン摂取を避け、リラックスできる環境を整える。
  • できるだけ毎日同じ時刻に寝起きし、体内時計を整える。
  • 寝る前にストレッチや軽いヨガ、呼吸法などで副交感神経を優位にし、入眠しやすい状態を作る。

「トレーニング+栄養+休養」はフィットネスの三本柱です。特に休養(睡眠とオフ日)は、ないがしろにされがちですが、実は筋肉を成長させ身体を適応させるための「見えないトレーニング時間」とも言えます。忙しい現代人にとって睡眠時間の確保は難しいかもしれませんが、可能な範囲で睡眠負債を溜めない生活を目指しましょう。質の高い睡眠習慣が身につけば、日中の活力が増し、トレーニング効果も飛躍的に高まるはずです。

ストレス管理: 心の健康が体の成果を左右する

トレーニング成果はメンタルの状態にも影響されます。慢性的なストレスや精神的緊張が強い状態では、筋肉の回復が遅れたり、モチベーションが低下したりしがちです。心理学的ストレスが高いとき、体内ではコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールは適度ならエネルギー動員などに役立ちますが、慢性的に高い状態が続くと筋タンパク質の分解を促進し、筋合成を阻害する可能性があります。また免疫力低下や睡眠の質悪化も招くため、トレーニングの効果を間接的に下げてしまいます。

実際の研究でも、慢性的な心理ストレスが高い人は、筋力トレーニング後の筋力回復が遅いという報告があります[76][77]。ある実験では、日常的なストレスレベルをアンケート評価し、高ストレス群と低ストレス群で筋トレ後の筋力回復率を比較しました。結果、高ストレス群はトレーニング24時間後の筋力回復が低ストレス群よりも顕著に劣っていました(高ストレス群: 直後からの回復率38%、低ストレス群: 回復率60%超)[76][78]。これはストレスにより十分な回復メカニズムが働かなかった可能性を示唆します。

では、初心者ができるストレス管理術にはどんなものがあるでしょうか。いくつか挙げてみます:

  • 運動それ自体を活用: 適度な運動にはストレス発散効果があります。イライラした時こそ軽く体を動かすと気分転換になり、ストレスホルモンの除去にも役立ちます。
  • リラクゼーション法: ヨガや瞑想、深呼吸法、マインドフルネスなどを日常に取り入れることで、自律神経のバランスを整えストレス反応を和らげます。ある研究では、マインドフルネスの実践が運動後の心身の回復度合いを高めたという報告もあります[79][80]
  • 余暇と趣味: トレーニングばかりに集中しすぎず、友人との時間や趣味に没頭する時間も大切に。心の余裕が結果的にトレーニング効率を上げます。
  • 十分な休養日: 頑張り屋の初心者ほど毎日トレーニングしたくなるかもしれませんが、週に1~2日は完全休養やアクティブレスト(軽い散歩など)の日を設け、心身をリセットしましょう。
  • 相談と支援: 悩み事や不安は一人で抱え込まず、家族や友人、トレーナーに相談してみてください。話すことで気持ちが軽くなり、建設的な対策が見えてくることもあります。

心の健康と体の健康はコインの裏表です。ストレスフリーな状態では筋肉も付きやすく、脂肪も燃えやすくなると考えて、メンタルケアもトレーニングの一部として意識しましょう。趣味としてフィットネスを楽しむくらいの気持ちで取り組むと長続きもしやすいですよ。

禁煙と節酒: パフォーマンスと健康を損なわないために

健康的なライフスタイル習慣として見逃せないのが喫煙と飲酒の問題です。まず喫煙(タバコ)は百害あって一利なし。喫煙者は有酸素運動能力(最大酸素摂取量)が非喫煙者より低く、疲労しやすいことが研究で示されています[81][82]。ある試験では、女性喫煙者はインターバルスプリントで後半の出力低下(疲労度)が非喫煙者より大きく、持久力指標のVO₂maxも有意に低かったと報告されています[81][82]。喫煙による一酸化炭素は血中で酸素と競合し、筋肉への酸素供給を妨げます[83][84]。その結果、持久力や回復力が落ち、トレーニング効果も出にくくなります。

さらに喫煙は食欲減退や栄養の吸収阻害、骨密度低下、ホルモンバランス攪乱など様々な悪影響を体に及ぼします。当然ながらがん・心臓病・脳卒中など重大疾病のリスクも高めます。フィットネス以前の問題としても禁煙は強く推奨されます。もし喫煙習慣があるなら、この機会に禁煙にチャレンジしましょう。禁煙後は数週間で肺機能が改善し始め、運動時の息切れが軽減すると言われます[85]。数ヶ月もすればパフォーマンスは飛躍的に向上し、体重管理もしやすくなるはずです[85]

次に飲酒(アルコール)です。適度な飲酒はストレス解消などプラス面もあるかもしれませんが、飲み過ぎはトレーニングの大敵です。アルコールは筋タンパク質の合成を妨げることが分かっています。例えば、筋トレ後にせっかくタンパク質を摂取しても、その直後に大量のアルコールを飲むと筋肉合成率が低下したという研究があります[86]。具体的には、男性が筋トレ後にエタノール1.5 g/kg(体重80kgなら約12ドリンク相当)を摂取した実験で、筋タンパク合成率が37%低下することが示されています[86]。つまり「トレ後の一杯」は至福かもしれませんが、筋肥大という観点ではマイナスなのです。

また、慢性的な過度の飲酒は筋力低下や筋萎縮を引き起こす恐れもあります[87]。アルコールの利尿作用で脱水が進みやすくなる点も運動には不利です。とはいえ、まったく飲むなというのも酷でしょう。大事なのは節度です。ビールなら中瓶1本程度、ワインならグラス2杯程度までなど、ほどほどの量に留めましょう。トレーニング日にはできるだけ避け、飲む場合も筋トレから十分時間を空けるか翌日にするのがおすすめです。なお、「飲酒で睡眠」という人もいますが、アルコールによる睡眠は浅くなるため疲労回復を妨げます。寝酒習慣はパフォーマンス向上の妨げになるので注意してください。

日常生活で活動量を増やす

定期的なジム通いやジョギングは素晴らしいことですが、日常生活での身体活動も健康・フィットネスには大きく影響します。いくら週3回運動しても、残りの時間ずっと座りっぱなしではプラスの効果が相殺されかねません。最近の研究では、長時間の座位行動(デスクワークやテレビ視聴)が多い人は、運動習慣があっても生活習慣病リスクが上昇するとの指摘があります[88][28]。つまり、「こまめに体を動かす習慣」が重要なのです。

初心者の方も、次のような生活アクティビティを意識してみましょう:

  • エレベーターではなく階段を使う。
  • 近場の移動は車に頼らず歩く/自転車を使う。
  • 1時間に一度は席を立ち、軽くストレッチや屈伸をする。
  • 通勤通学で一駅分歩く、買い物で遠回りする等、歩数を増やす工夫をする。
  • 休日は家でゴロゴロせず、公園散歩やアクティブな趣味(ハイキング、スポーツ等)に時間を使う。

このような日常活動の積み重ねがNEAT(非運動性熱産生)と呼ばれる消費エネルギーとなり、体重管理にも役立ちます。例えば、1日に3000歩多く歩けば120kcal前後余計に消費できます。塵も積もれば山となり、代謝アップや心肺機能維持に貢献します。

まとめ: ライフスタイル習慣の改善ポイント

  • 睡眠最優先: 7~8時間の睡眠時間を確保し、寝不足を避ける[71][75]。睡眠環境を整え、寝る前のリラックス習慣を持とう。
  • ストレスケア: 適度な休息日と趣味時間を持ち、心身のリフレッシュを図る。ヨガ・瞑想・入浴などで副交感神経を高める[79]。笑うことも大事!
  • 禁煙実行: 喫煙者は禁煙にチャレンジ。運動能力が改善し、健康リスクも大幅減[81][82]。ニコチン置換療法や禁煙外来も活用。
  • 飲酒節度: アルコールはほどほどに。トレ日には極力控え、飲んでも少量[86]。筋肥大を目指すなら週末だけの楽しみにする等の工夫を。
  • 日常でよく動く: 座りっぱなしに注意し、通勤・買物で歩く、家事で体を動かすなど生活内活動量を上げる。目標1日8000~10000歩を目指そう。
  • 定期検診: 自分の血圧・血糖・コレステロールなど健康指標を把握しよう。トレーニングの効果で改善が見られるとモチベーションもアップします。
  • 環境づくり: 家族や友人にも健康的な習慣に付き合ってもらえると継続しやすいです。一緒にウォーキングする、食事を見直すなど協力して取り組みましょう。

ライフスタイル習慣は一朝一夕には変わりませんが、少しずつ改善していけば確実に体と心に良い変化が表れます。フィットネスは単なる運動だけでなく、生き方そのものを健康的にシフトするチャンスとも言えます。できることから一つずつ、無理なく生活習慣をブラッシュアップしていきましょう。

参考文献(健康とライフスタイル習慣)

  1. Erlacher D., Vorster A. (2023) Sleep and muscle recovery: current evidence. Current Issues Sport Sci, 8(2):58.[71][72]
  2. Vitale KC et al. (2019) Sleep quality and athletic performance. Sports Med, 49(2): 171-182.[74][73]
  3. Gnacinski SL. (2021) Chronic stress impairs post-exercise recovery. TSAC Report, 59(4): 12-19.[76][78]
  4. Teixeira PJ et al. (2012) Exercise, physical activity, and self-determination theory. Int J Behav Nutr Phys Act, 9:78.[39]
  5. Lee IM et al. (2012) Effect of smoking on aerobic capacity. Med Sci Sports Exerc, 44(11):1827-34.[81][82]
  6. Thakkar B. et al. (2012) Smoking and cardiorespiratory fitness. Eur Heart J, 33(S1):585.
  7. Parr EB et al. (2014) Alcohol ingestion impairs postexercise muscle protein synthesis. PLOS ONE, 9(2):e88384.[86]
  8. Paschalis V et al. (2019) Alcohol and muscle recovery in strength training. Appl Physiol Nutr Metab, 44(1): 52-59.[87]
  9. Behm DG et al. (2023) Dynamic stretching and injury incidence. Int J Environ Res Public Health, 20(8):6524.[19]
  10. Warburton DE., Bredin SS. (2017) Health benefits of physical activity: cardiovascular, cancer, and more. Curr Opin Cardiol, 32(5): 541-556.[88][28]

5. 体重管理とダイエット

フィットネス初心者のための体重管理とは

多くのフィットネス初心者にとって、体重管理は重要な目標です。「減量してスリムになりたい」「筋肉をつけて体重(筋量)を増やしたい」――いずれにせよ体重や体脂肪率のコントロールは容易ではなく、正しい知識と戦略が必要です。ここでは、科学的根拠に基づいた効率的な減量法・増量法と、リバウンドなく長期的に体重を維持するコツについて解説します。ダイエットにありがちな流行の極端な方法や根拠の乏しい「ウワサ話」に惑わされず、健康的かつ持続可能な体重管理を目指しましょう。

減量(ダイエット)の基本原則: カロリー収支と栄養バランス

減量の大原則は、「消費カロリー > 摂取カロリー」の状態、すなわちカロリー赤字を持続的に作り出すことです[34]。摂取エネルギーが不足すると、体は不足分を体内に蓄えた脂肪を燃やすことで補い、結果として体脂肪が減少します。この基本はどんなダイエット法でも共通しており、「糖質制限」「脂質制限」「プチ断食」など様々な方法も究極的にはカロリー赤字を作る手段に過ぎません。

カロリー赤字の目安としては、1日あたり500~800kcal程度のマイナスが適度と言われます。500kcalの赤字なら、1週間で約0.5kg(体脂肪換算)の減量ペースです。これは比較的緩やかで筋肉も落ちにくいペースです[69][66]。急ぐ気持ちはあるかもしれませんが、極端に1200kcal以上も削るようなダイエットは栄養不足・筋肉減少・リバウンドのリスクが高まるので避けましょう。実際、急激減量は緩徐減量に比べ、除脂肪体重の減少が大きかったとの報告もあります[89]

摂取カロリーを減らす際には、栄養バランスに注意が必要です。むやみに食事量を減らすだけでは、タンパク質やビタミン・ミネラルまで不足し、体調不良や筋肉量減少を招きます。前セクションで述べたように、ダイエット中こそ高タンパク質(体重1kgあたり少なくとも1.6g以上)を維持し、筋肉の分解を最小限に食い止めましょう[53]。また野菜や果物からのビタミン・食物繊維も積極的に摂取し、満腹感と栄養素を確保します。

例えば具体的には: – 朝食: オートミール+プロテイン+ベリー類(高タンパク・高食物繊維で満腹に) – 昼食: 鶏むね肉のサラダ(野菜たっぷり+脂肪少なめのタンパク源) – 夕食: 豆腐ハンバーグと温野菜、玄米少量(低脂質で栄養バランス良好) – 間食: ゆで卵、ギリシャヨーグルト、無塩ナッツ少量(空腹対策のタンパク質源)

こうした低カロリー高栄養密度の食事をとることで、カロリーを抑えても体が必要とする栄養はしっかり供給できます。加えて水を充分に飲むことや、ゆっくり噛んで食べることも満腹感維持に役立ちます。

運動面では、有酸素運動を追加して消費エネルギーを増やすことが減量を加速するのに有効です。ただし食事管理なく運動だけで痩せるのは非効率になりがちです。食事で300kcal削り、運動で200kcal消費する、といった併用が最も効果的でしょう[35]。事実、食事療法と運動を組み合わせたグループは、どちらか単独よりも減量効果が高かったとするレビューもあります[35]

体脂肪率と見た目の変化

減量においては体重計の数字ばかりに囚われないことも重要です。筋トレを行いながらだと、脂肪が減って筋肉が増え、体重が思ったほど減らなくても見た目は引き締まることがあります。体脂肪率やウエスト囲なども併せてチェックしましょう。ヘルシーな体脂肪率の目安は、男性で10~20%、女性で20~30%程度ですが、個人差があります。

筋トレ初心者が減量すると、最初の数週間で筋肉が増え脂肪が減る「体質改善」が起こりやすく、体重があまり変わらなくてもサイズダウンするケースがよくあります。このフェーズではむしろ体重より鏡や写真での見た目変化、衣服のフィット感などを重視してください。逆に極端な食事制限だけのダイエットだと筋肉ばかり落ち、体重の割に締まりのない体つきになる場合もあります。目標は「やせる」ではなく「引き締まる」こと、と考えると筋トレと高タンパク食の重要性が理解できるでしょう。

リバウンド防止と体重維持

減量が成功しても、そこで気を抜いてリバウンドしては意味がありません。リバウンド(体重の回復)を防ぐには、減量期に培った良い習慣を維持期にも継続することです。具体的なポイントは:

  • 徐々にカロリーを戻す: ゴール体重に達したら、いきなり好き放題食べるのではなく、少しずつ摂取カロリーを増やしていきます(逆ダイエット)。例えば毎週100kcalずつ増やし、体重が安定するラインを探る方法です。急激に元の食事に戻すと脂肪がつきやすいので注意します[63]
  • 運動習慣の維持: 減量中に始めた運動は、ぜひ継続してください。運動は体重維持に極めて効果的です。研究では、減量成功者の多くが週150~300分程度の運動習慣を維持していることがわかっています。
  • 定期的に体重測定: 自分の体重や体脂肪率を継続的に記録しましょう。少し増え始めたら早めに対処できます。研究によると、週1回以上体重をチェックする人はリバウンドしにくい傾向があります。
  • 極端な制限をしない: 減量期が終わった反動で暴飲暴食するのはNGです。時にはご褒美デーを作って好きなものを食べるのは構いませんが、基本の食生活は大きく乱さないようにします。根本的に「食の嗜好」を健康的なものに変えていくのが理想です。
  • 十分なタンパク質摂取: 体重維持期も高タンパク食を続けることで満腹感が持続し、余分な間食を防げます。また筋肉量維持にも役立ちます。

興味深いことに、体重を大幅に減らした後の身体はエネルギー消費がやや低下する傾向があり(ホメオスタシスによる)、リバウンドしやすい状態になります[90]。しかし運動により筋肉量を増やすことでその影響を打ち消すことができます。筋トレでエネルギー消費が上がれば、多少食べても太りにくい体になります。したがってリバウンド防止にも筋肉をつけることが極めて有効なのです。

筋量増加(バルクアップ)のコツ

体重管理には減量だけでなく増量(筋肉量増加)も含まれます。筋肉を増やして体を大きくしたい人は、前述のとおりオーバーカロリーかつ十分なたんぱく質摂取が必要です。ただし増量期でも闇雲にジャンクフードを食べて太れば良いわけではありません。筋肉より脂肪ばかり増えては、あとで減量が大変になります。

筋量増加を狙うなら、クリーンバルク(きれいな増量)を心がけましょう。具体的には: – 良質なタンパク質・炭水化物を中心にカロリーアップする(ささみ・魚・卵+玄米・オートミール・果物等)。 – 脂質は適度に増やすが揚げ物や菓子からではなく、ナッツやオリーブオイル、アボカドなどから摂る。 – 増量ペースは週0.2~0.5kg程度とし、急激に脂肪をつけすぎない。 – 筋トレの強度・ボリュームをしっかり確保し、余剰カロリーが筋肉合成に使われるようにする。 – 増量期も適度に有酸素運動を行い心肺機能を維持する(過度の有酸素は不要)。

増量中は体脂肪も多少は増えますが、上記のように管理すれば筋肉:脂肪の増加比率をなるべく筋肉寄りにできます。また増量後半には筋肉の成長が頭打ちになり余分な脂肪がつきやすくなるので、そのタイミングで増量終了→減量(カット)に切り替えると効率的です。一般に3~6ヶ月サイクルでバルクアップとカットを繰り返すことで、段階的に筋肉量を増やしつつ脂肪は適度に削るこのようなボディメイク法が用いられます。

まとめ: 体重管理成功のための心得

  • 「速さ」より「持続性」: 急激な減量・増量より、時間をかけて着実に進める方が結果的に良い体になり維持しやすい[69]
  • 食事記録を活用: 摂取カロリーやPFCバランスを把握するため、初心者ほどアプリ等で食事を記録するのが有効です。数字で把握すると調整が容易になります。
  • ハードルを上げすぎない: 完璧を求めると挫折しがちです。週5日は計画通り・2日は少し緩めでもOKくらいの気持ちで、長期戦を乗り切りましょう。
  • 仲間や専門家のサポート: 一人で管理が難しければ、友人と経過を報告し合ったり、パーソナルトレーナーや栄養士に相談したりするのも手です。周囲の支援は成功率を高めます。
  • 体重以外の指標も重視: 鏡に映る自分の姿、写真の変化、体脂肪率、筋力の向上、ウエストサイズなど、様々な視点から進捗を評価しましょう。健康診断の数値改善も立派な成果です。

体重管理は単なる数字合わせではなく、健康的な生活習慣の確立プロセスでもあります。焦らずコツコツと良い習慣を積み上げることで、リバウンドのない理想の体に近づいていけるでしょう。

参考文献(体重管理とダイエット)

  1. Hall KD (2011). Quantification of the effect of energy imbalance on bodyweight. The Lancet, 378(9793):826–37.[34][35]
  2. Purcell K et al. (2014). The effect of rate of weight loss on long-term weight management. Lancet Diabetes & Endocrinology, 2(12):954–62.[69][66]
  3. Weinheimer EM et al. (2010) Importance of dietary protein in weight loss. Am J Clin Nutr, 91(3): 547-55.[53]
  4. Dulloo AG., Montani JP. (2015) Pathways from weight fluctuations to metabolic diseases. Obes Rev, 16 Suppl 1:77-85.[63][65]
  5. Wing RR., Phelan S. (2005) Long-term weight loss maintenance. Am J Clin Nutr, 82(1 Suppl):222S-225S.[90][91]
  6. MacLean PS et al. (2015) Biology of weight regain: implications for obesity treatment. Am J Physiol Endocrinol Metab, 311(3): E central.[63]
  7. Johns DJ et al. (2014) Diet or exercise or combined for weight loss? Int J Obes, 38(12):1488-93.[35]
  8. Garthe I., Sundgot-Borgen J. (2013) Athlete body composition and performance. Sports Med, 43(8): 765-778.[87]
  9. Ribeiro AS et al. (2019) Differential effects of rapid and slow weight loss on body composition. J Strength Cond Res, 33(9): 2389-2396.[69]
  10. Fogelholm M. (2010) Physical activity in weight maintenance. Int J Obes, 32: S75-S83.

6. モチベーションと行動変容

続けることが最大の課題

フィットネス初心者にとって、最初の数日はやる気満々でも、時間が経つにつれモチベーションの維持が最大の壁になります。実際、運動を始めた人の約50%は最初の6ヶ月以内にやめてしまうとも言われます[92]。どんなに優れたトレーニングプランや栄養計画も、続けられなければ意味がありません。そこで本セクションでは、「いかにしてやる気を保ち、運動習慣をライフスタイルに定着させるか」という行動変容のポイントを解説します。モチベーション理論や心理学の知見を踏まえ、楽しく長続きさせるコツを身につけましょう。

内発的動機づけ vs 外発的動機づけ

モチベーションには大きく分けて内発的動機づけ(自分が心から楽しい・やりがいを感じる)と外発的動機づけ(報酬や罰、義務感による)があります[93][94]。研究によれば、内発的動機が強い人ほど運動の長期継続率が高いことがわかっています[95][39]。一方、痩せたいからやらねば、周囲に言われたから仕方なく…といった外発的な理由だけだと、最初は始めても徐々にやめてしまう傾向があります[94][96]

では初心者が内発的動機を高めるにはどうすればよいでしょうか。一つは運動自体を楽しめる工夫をすることです。例えば音楽を聴きながらトレーニングする、友人と一緒にワークアウトする、新しい種目にチャレンジしてゲーム感覚で臨むなど、自分なりの「楽しい要素」を見つけましょう。実際、HIIT(高強度インターバルトレーニング)を行った人は中強度の単調な運動をした人より「楽しかった」と感じ、運動継続意欲が高かったという研究もあります[23]。辛いだけのメニューより、達成感や変化に富むメニューの方が楽しめて続きやすいのです。

また、運動そのものの楽しさ以外に、「〇〇ができるようになった!」という成長実感も強力な内発的モチベーションになります。最初は1回もできなかった腕立て伏せが10回できるようになった、最初は苦しかったジョギングが気持ちよく走れるようになった等、自分の進歩を記録し可視化しましょう。日記やSNSで「今日は○○ができた」と記録するのも効果的です。人は上達や成果を感じるとそれ自体が快感となり、さらに続けたくなるものです。

一方、外発的動機(例えば「夏までに痩せて水着を着る」「大会で入賞する」など具体的な目標やご褒美設定)は短期的な推進力として有用です。コツは、遠い目標だけでなく身近な小目標と報酬を設定することです。「体重5kg減」という大きな目標だけだと道のりが長く挫折しやすいので、「まず1kg減ったらお気に入りのプロテインドリンクで祝う」「2週間皆勤したら新しいウェアを買う」など、短期のゴールと自分へのご褒美を用意しましょう。これによりモチベーションを細かくリフレッシュできます。

SMARTの原則で目標設定

モチベーション維持のためには、目標設定の仕方が重要です。ただ「筋肉をつけたい」「痩せたい」では漠然としていて行動に結び付きません。心理学では効果的な目標設定にSMARTの原則が推奨されます。SMARTとはSpecific(具体的)、Measurable(計測可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(自分にとって重要)、Time-bound(期限付き)の頭文字です。

例えば、「3ヶ月で体脂肪率を25%から20%に減らす」という目標はSMARTです。具体的で測定でき、自分の努力で達成可能であり、期限もあります。また「健康的に引き締まった体になりたい」という自分の価値観(Relevant)とも一致しています。このような目標を立てると、何をすべきかが明確になり行動に移しやすくなります。

初心者の方も、まずはSMARTな短期目標・中期目標・長期目標を紙に書き出してみましょう。例えば: – 短期(1ヶ月以内): 「週に2回は必ずジムに行く」「ランニングを週合計10km走る」 – 中期(3~6ヶ月): 「体重を5kg減らす」「5kmマラソン大会に完走する」 – 長期(1年以上): 「腹筋が割れた状態を維持する」「◯◯スポーツの大会に出場する」

目標を書き出すことでモチベーションを「見える化」し、自分との約束とする効果があります。達成したらチェックを入れるなどして、自己効力感を高めていきましょう。

習慣形成と環境作り

最終的な理想は、「モチベーションに頼らずとも習慣として当たり前に運動する」状態です。その境地に至るには習慣形成のテクニックが役立ちます。研究によれば、ある行動を習慣化するには平均66日間の繰り返しが必要だったそうです[97]。3週間ではなく、2~3ヶ月は頑張って続ければ、あとは歯磨きのように自動的に運動できるようになる可能性が高いということです。

習慣化のコツとして、有名なif-thenプランニング(実行意図)」があります。「もし○○したら△△する」と具体的に決めておく方法です[98][99]。例えば「毎朝起きたら5分ストレッチ」「仕事から帰宅したらジムバッグを持って家を出る」「夕食後に30分ウォーキング」など、自分の生活の流れに運動を組み込みます。こうすることで、その場面に来れば自動的に行動が引き起こされ、意思の力に頼らず習慣化できます。

環境の工夫も大切です。例えばリビングにヨガマットを敷きっぱなしにしておけば、いつでもストレッチしようという気になります。見える所にダンベルを置いておけば、テレビを見ながら腕を鍛えるかもしれません。ジムに行くのが面倒なら、職場からの帰り道にあるジムに入会する、または自宅に最低限の器具を揃える手もあります。「やらざるを得ない環境」を自分で作るのです。

家族や友人にも協力を仰ぎましょう。一緒に運動する約束をしたり、進捗を報告したりすれば、社会的な責任感も生まれ継続しやすくなります。最近はSNSに運動ログを投稿して励まし合うコミュニティも盛んです。同じ目標を持つ仲間を見つけることも、強力なモチベーション源となるでしょう。

挫折から立ち直る

どんな人でも、時にはサボってしまったり体調を崩したりして計画通りにいかない時があります。大事なのは完璧主義にならず、挫折から立ち直る力(リジリエンス)を持つことです。一度休んだからといって「もう自分はダメだ…」と諦める必要は全くありません。むしろ休養も成長のうちですし、1日サボったら翌日取り戻せば良いだけです。

モチベーションが落ちてきたと感じたら、初心に返って目的を思い出すことも有効です。「なぜ自分は運動を始めたのか?」紙に書き出してみましょう。健康診断の結果に焦りを感じたから、好きな服を着こなしたいから、家族に心配かけたくないから、理由は様々でしょう。その原点を振り返ることで、また火が灯ることがあります。

小さな成功体験の積み重ねも自信となります。できなかったことができるようになったら、自分を素直に褒め、ご褒美をあげてください。「自分にはできる」という感覚(自己効力感)が高まると、行動変容は加速します[76][78]。逆に失敗しても落ち込まず、「次はこうしよう」と前向きにプランを練り直しましょう。

まとめ: 楽しく継続するためのヒント

  • 好きな運動を見つける: ジムが続かなければダンスやスポーツでも構いません。「楽しい」と感じることを追求してください[23]
  • ルーティン化: 決まった曜日・時間に運動する習慣を作る(例: 「毎週月水金の18時は筋トレ」)。習慣になるとやらないと落ち着かなくなります[97]
  • ログを付ける: 運動日記やアプリでトレーニング内容・体調・気分を書く。振り返ることで進歩を実感でき、モチベが維持されます。
  • コミュニティ参加: グループレッスンやオンラインコミュニティで仲間を作る。一緒に頑張る仲間の存在は大きな支えです。
  • コーチ/トレーナー: 専門家に定期的に指導や相談を受けると、技術向上だけでなくモチベーション管理にも役立ちます。
  • ポジティブ思考: 「できなかった」「サボった」ではなく「以前よりできるようになったこと」「リフレッシュできた」と前向きに解釈しましょう。

最後に、フィットネスは人生を豊かにする旅です。途中でやる気が落ちることも含めて誰もが通る道ですので、自分を責めず気長に向き合ってください。一度習慣になってしまえば、今度は運動しないと気持ち悪いくらいになります。その境地まで、ぜひ楽しみながら歩んでいってください。

参考文献(モチベーションと行動変容)

  1. Thum JS et al. (2017) HIIT is more enjoyable than moderate exercise. PLOS ONE, 12(1):e0166299.[23]
  2. Ryan RM., Deci EL. (2000) Intrinsic and extrinsic motivations. Contemp Educ Psychol, 25(1):54-67.[93][94]
  3. Teixeira PJ et al. (2012) Autonomous motivation and exercise adherence. Int J Behav Nutr Phys Act, 9:78.[95][39]
  4. Lally P et al. (2010) How habits are formed: needing 66 days. Eur J Soc Psychol, 40(6):998-1009.[97][98]
  5. Milne S et al. (2002) Implementation intentions and exercise. Br J Health Psychol, 7(2):163-84.[98]
  6. Van Rensburg DC et al. (2021) Effect of music on exercise enjoyment. Psychol Sport Exerc, 52:101822.[23]
  7. Kendzierski D., Johnson W. (1993) Restructuring exercise schemata. J Sport Exerc Psychol, 15(1): 119-132.
  8. Norcross JC et al. (2002) Self-change: habit maintenance. Clin Psychol, 9(4): 428-441.[99]
  9. Levinger P et al. (2020) Group exercise vs home exercise in adherence. Biomed Res Int, 2020:7051901.
  10. Dishman RK. (1988) Exercise adherence research. Ann Behav Med, 10(2): 52-54.[92]

7. 参考文献


[1] [2] [3] [4] [8] [12] [15] [16] [21] [22] [24] No Time to Lift? Designing Time-Efficient Training Programs for Strength and Hypertrophy: A Narrative Review | Sports Medicine

https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-021-01490-1

[5] [7] [25] [26] [29] Combining muscle strengthening activity and aerobic exercise: a prescription for better health in patients with hypertension | Hypertension Research

https://www.nature.com/articles/s41440-024-01868-4?error=cookies_not_supported&code=58e81130-eb8c-4b00-a401-23aa6aa9457a

[6] [27] [28] [88]  Summary and application of the WHO 2020 physical activity guidelines for patients with essential hypertension in primary care – PMC

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9618974

[9] [10] [11] Effect of free-weight vs. machine-based strength training on maximal strength, hypertrophy and jump performance – a systematic review and meta-analysis | BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation | Full Text

https://bmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13102-023-00713-4

[13] [14] Minimalist Training: Is Lower Dosage or Intensity Resistance Training Effective to Improve Physical Fitness? A Narrative Review | springermedicine.com

https://www.springermedicine.com/minimalist-training-is-lower-dosage-or-intensity-resistance-trai/26265200

[17] A systematic review into the efficacy of static stretching as … – PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18785063

[18] Does static stretching reduce injuries in sports? – Consensus

https://consensus.app/search/does-static-stretching-reduce-injuries-in-sports/rhxjdqvzQoSNnznB34B50A

[19] [20]  Potential Effects of Dynamic Stretching on Injury Incidence of Athletes: A Narrative Review of Risk Factors – PMC

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10289929

[23] [92] High-Intensity Interval Training Elicits Higher Enjoyment than Moderate Intensity Continuous Exercise | PLOS One

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0166299

[30] The effects of high velocity resistance training on bone mineral …

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S8756328223003198

[31] Optimal resistance training parameters for improving bone mineral …

https://josr-online.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13018-025-05890-1

[32] [33] [63] [64] [65] [70] Weight cycling based on altered immune microenvironment as a result of metaflammation | Nutrition & Metabolism | Full Text

https://nutritionandmetabolism.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12986-023-00731-6

[34] Diet or Exercise Interventions vs Combined Behavioral Weight …

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2212267214010557

[35] A systematic review on the effectiveness of diet and exercise in the …

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1871402123000553

[36] [37] Combining muscle strengthening activity and aerobic exercise

https://www.nature.com/articles/s41440-024-01868-4

[38] Finding Your Drive: Intrinsic vs. Extrinsic Motivation in Health and …

[39] [93] [94] [95] [96] Exercise, physical activity, and self-determination theory: A systematic review | International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity | Full Text

https://ijbnpa.biomedcentral.com/articles/10.1186/1479-5868-9-78

[40] [41] Effect of exercise for depression: systematic review and network …

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38355154

[42] [71] [72] Sleep and muscle recovery – Current concepts and empirical …

https://ciss-journal.org/article/view/9347

[43] [73] [74] [75] Effects of sleep deprivation on sports performance and perceived …

https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2025.1544286/full

[44]  Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies – PMC

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9209691

[45] Effect of exercise for depression: systematic review and network …

https://www.bmj.com/content/384/bmj-2023-075847

[46] [47] [48] [49] [50] [51]  Healthy diet

https://www.who.int/health-topics/healthy-diet

[52] International Society of Sports Nutrition position stand: protein and …

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2117006

[53] A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect …

https://bjsm.bmj.com/content/52/6/376

[54] International society of sports nutrition position stand: nutrient timing

https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-017-0189-4

[55] [57] Low carbohydrate, high fat diet impairs exercise economy and …

https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1113/jp273230

[56] Effect of Low vs. High Carbohydrate Intake after Glycogen-Depleting …

https://www.mdpi.com/2072-6643/16/16/2763

[58] Hydration to Maximize Performance and Recovery

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8336541

[59] [62] Effects of gradual weight loss v. rapid weight loss on body … – PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32576318

[60] Gradual weight loss is no better than rapid weight loss for long term …

https://www.bmj.com/content/349/bmj.g6267

[61] [69] [89] Rapid Weight Loss vs. Slow Weight Loss: Which is More Effective on …

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5702468

[66] Effects of rapid or slow weight loss on body composition and …

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0195666312000153

[67] How much protein can the body use in a single meal for muscle …

https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-018-0215-1

[68] High-Fat Ketogenic Diets and Physical Performance: A Systematic …

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2161831322003763

[76] [77] [78] [80] Strategies Aimed at Optimizing Mental Recovery from Training and Occupational Performance

https://www.nsca.com/education/articles/tsac-report/strategies-aimed-at-optimizing-mental-recovery/?srsltid=AfmBOorDam-I5whGX8I2WGLnHnqrPAmNAh5fxWHw_5N8KiD5CgBT-hlP

[79] Exploring the role of mindfulness in the stress-recovery balance

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1469029224000918

[81] [82] [83] [84]  The effects of cigarette smoking on aerobic and anaerobic capacity and heart rate variability among female university students – PMC

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3804543

[85] The effects of nicotine withdrawal on exercise-related physical ability …

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/15502783.2024.2302383

[86] Alcohol Ingestion Impairs Maximal Post-Exercise Rates of …

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0088384

[87] Moderate alcohol consumption does not impair overload-induced …

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4393167

[90] [91] Cardiometabolic characteristics of weight cycling: results from a mid …

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/oby.24163

[97] [98] [99]  Making health habitual: the psychology of ‘habit-formation’ and general practice – PMC

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3505409